免許皆伝

エツ子は４３歳の女である、ながらく恋はしていない
それは彼女の信条というよりは、２１で結婚した元主人が早世してしまい
いきなり放り出された社会の荒波を泳ぐのに無我夢中で
気がつけばこの年齢になっていたということだ

今日もエツ子は郵便局のアルバイトをするための研修に来ていた
郵便局の一角にあるその小部屋にはエツ子と講師の２人だけである
ササと名乗ったその男性はエツ子よりも一回りは年上だろうか
日に焼けた肌とやさしそうな笑顔がエツ子のわすれていたなにかを思い出させる

「　今日は何もすることありませんね　」と男は言った
お金をもらって研修に来ている身分なのでエツ子は特に不満に思わなかった
携帯端末の操作方法などがのっている用紙を見るフリをして脳のスイッチを切り
熟女が主人公の官能小説などを考えているうちに午前中は終了した

午後からは２輪車の実習である
実習と聞いてエツ子は恐怖した、…ササと身体が触れ合ってしまうかもしれない…！
そう想像しただけで身震いがする、エツ子の女は燎原に放たれた炎のように燃え広がるだろう
ああ…！抱いて！と股間をびっしょんこにしているとササがやってきた

「　もう教えることないネ！　」とササは言い、午後は採用局まで行って！
なんか手続きあるみたいだから！といきなりの免許皆伝
マジで何しに来たんだか…とエツ子は思った